マッチョバーに行った話

私は腐女子だ。

主に日常を暮らす男を愛でて、あわよくば年を重ね熟成しきった男と男のラブを好むタイプの腐女子だ。

そこに筋肉があるとなお良しと思う。

 

そんな私は学生の身でBLを主食にしながら、ハンドメイドなるものを嗜んでいる。訳あって高頻度で関西に飛ぶのだが、この日も例外なく関西に飛んでいた。

 

雇い主「木曜めっちゃ頑張って、金曜早めに切り上げてマッチョバー行こう」
宮波「まじすか、やったーー!!」

昨年夏の某日夜、雇い主からマッチョバーの誘いを受けた。
マッチョバーのツイートを見て以来、いつか行ってやろうと思っていたマッチョバー。まさかこんなに早いタイミングでマッチョに囲まれる日が来ようとは……。

あまりの興奮によりホテルのベッドで眠ることを諦めそうになった。

ちなみに、マッチョバーのサイトの求人の「マッチョ募集」が最高にクールで好きなので是非見てください。自己PRには自信や好きな筋肉を入力するらしいです。

マッチョバー|京都、大阪の筋肉リゾート


「マッチョバー予約できるらしいからしていい?」
マッチョ予約できるんかい。まあ飲食店やしな、できなくはないわな。

これだけバズっているマッチョバーに確実に行けるという保証ができるのであればと二つ返事で了承した。

「一万出したら半径1メートル以内に永遠にマッチョがいるらしい」

キャバクラかよ。マッチョの指名制とかあるんだろうか。とりあえずそれは置いといたものの、「とりあえず落花生握りつぶし放題と生ハム食べ放題を予約した」らしい。

落花生握りつぶし放題って潰し放題はマッチョ側なのでは?

あとでコース変更ができるとのことで、まあなんともお客さんに優しいというか、気が向いたら諭吉1人嫁に出して店にいる間1メートル以内にマッチョが常駐してくれるかもしれないのだ。筋肉を眺め続けることが趣味の私にはありがたいサービスじゃないですか。
それに追い打ちをかけるかのように予約内容を伝えてくる雇い主。
「マッチョに近いカウンターにしたから」
こういう配慮をしてくれる雇い主で本当によかったと思う。目の前でマッチョがカクテル振るかもしれないと考えるだけで口元が緩みそうになる。危ない。変質者すぎるので当日までギリギリで表情筋を保っておきたい。
マッチョのいるバーに過大な期待を持ったまま当日を迎えることになる。
仕事中にマッチョの話をしたはずだけど、マッチョ指名とか、童顔のマッチョの話しかしてなかった。雇い主は童顔のマッチョより、ボブって名前がついてそうなマッチョがいいらしい(聞き流してるから間違っている予感しかしない)。
なお、このマッチョバー、バーというだけあってというか、案の定チャージがついてた。そしてそのチャージ料は、マッチョバーのマッチョたちがより良い筋肉をつくるための糧になるらしい。

仕事を早めに切り上げて雇い主と京都へ。予約の時間が近づくにつれて「やばい、マッチョが出勤しちゃう」と焦る雇い主に腹筋を殺される。

ようやく繋がった電話の先で、マッチョは怒ることもなく明るい口調で「大丈夫マッチョ!お待ちしてマッチョ」と言ったらしい。徹底している。
ちなみに前日のメールも「お待ちしてマッチョ」と書いてあった。


入店早々「いらっしゃいまっちょ!!!」の声。体育会系特有の熱い挨拶が飛び交う。
白いポロシャツ(パツパツ)に蝶ネクタイ。超短パンで御御足やら自慢の二頭筋やらをふんだんに晒していくスタイル。さすが筋肉のパラダイスと言わざるを得ない。


女性のお客様にはお姫様抱っこで席までお運びしてます!


雇い主は早々にカメラを構えたので、必然的に私が運ばれることになる。動揺しながら逞しい太ももに着席。肩に腕を回した途端、決して細くない私の体がヒョイと持ち上がった。やばい、これはやばい。

歩いて5歩くらいのカウンター席まで運ばれた。歩いた方が早い。


店の中には3人のマッチョ。一際マッチョのマッチョ。この人は店長、しかも京大生。ボディービルマッチョ(というらしい)。

ちょっと童顔よりのマッチョと、猿とゴリラを足して2で割った感じの猿顔のマッチョ。猿顔のお兄さんがどうにも高校時代の知り合いに似ていて余計に笑ってしまう。ちなみにこのマッチョ、ボクサーだった

筋肉をふんだんに使ったドリンクとタンパク質を味わえるマッチョバー。金を払えば筋肉(サービス)も買える
落花生握りつぶし放題のコース、どういうことかと思っていると「失礼しマッチョ!」と現れたマッチョが落花生を乗せた皿を持って来た。
「ちょっと落花生砕きます!見ててください、ふんっ」
次の瞬間、肘のくぼみに置いてた落花生が砕けた。
いくつか砕いたあと、マッチョは残りの落花生を手に取り「いきますよいきますよ、オラァッ」と落花生を握りつぶした。握りつぶし放題(マッチョが)の完成である。
粉々に砕かれた落花生が皿に落ちる。殻の中の豆まで砕かれている。なんだこれは。

カクテルを頼めば超生搾りで出てくる。目の前で切りたて、なおかつ超至近距離で絞ってくれるオプション付き。
「マッチョ汁が飛ぶんでこれ、失礼しマッチョ!」
ステーキ屋さんとかで渡されるナプキンを渡された。マッチョ汁ってなんや。
「オレンジじゃなくて筋肉みてくださいね!!」

一瞬で消えていくオレンジよりも筋肉を見ろという熱いマッチョイズムを感じる。

「ほらほら一瞬だよ!」と言いながら立派なオレンジやグレープフルーツが3秒経たずしてゴミ(のよう)になった。

果肉まで絞り出される始末。こんな運命を辿ることになったオレンジとグレープフルーツに同情する。
ただもう、とにかく超美味しい(生搾りだから)。リキュールに果汁100%+果肉ジュース。最高にうまい。

カクテルは超小刻みに震わせて筋肉の血管を浮き上がらせて見せつけてくる。
これもマッチョ汁が入ってしまうらしい。カクテルなのに。
「マッチョ汁の味いかがっすか!」
「マッチョ汁うまいです」
もう自分でも何を言ってるのかわからない。

マッチョ汁のおかげで私のテンションはハイなのできっと麻薬的なアレだと思う。

話しかければ二つ返事で筋肉をみせてくれて、触らせてくれる。胸筋が自慢の猿顔のお兄さん、めっちゃ立派な雄ぱいすぎて正常な感覚を持っていたはずの雇い主と二人で大興奮。エロ筋と呼ばれるVラインの筋肉をめちゃくちゃ触らせてもらった。
筋肉すごい……この世の奇跡が詰まっている……

梅酒はメイソンジャーに入って出てくる。ポーズがつくというのでワクワクしながら待ってると、頼むたびにボンジョビのイッツマイライフやらビーズのウルトラソウルやらが流れ始め、曲に合わせて筋肉を客の顔面数ミリの距離で見せつけてくる。お兄さん達の筋肉と肌は総じて綺麗でした。

そして、サビのマックスのテンションの時に「オラッ」とメイソンジャーの蓋を開けてくれる。もうなんかすごい。テンションでやりきってる感がすごい。
ビールもとりあえず負荷器具付けて無駄な動き(筋肉トレーニング的には無駄ではない)をして、泡が多くなったのは「マッチョすぎた」と捨てた。マッチョで全ての言い訳ができる世界がここにはある。


いつの間にか22時を過ぎ、テンションは最高潮。せっかく来たからと「筋繊維の解放」というオプションを注文。説明書きには『マッチョが周りに集まって、繊維に包まれた筋肉を解放する』とある。最高にわけがわからない。
ただ、金を払えばマッチョが買えることだけはわかったので金を払った。この世は金なのである。
注文を聞いたマッチョ、目を見開いて一瞬固まる。他の客に対応しているマッチョに耳打ちをするたび、そのマッチョは目を見開いていた。

3人のマッチョが代わる代わるタンクトップに着替えていく。
「着替え終わりマッチョ!」
どうしても語尾にマッチョつけなあかんのか。

店内が暗くなり、スターウォーズのテーマが流れ始める。ポージングの名前を言いながら、店長マッチョを筆頭にポーズを決めていく。全然わからないけどとりあえず筋肉は壮大だった。
音楽の一番の盛り上がり。マッチョ3人衆はタンクトップに手をかけ、ビリィッと破く。それはもう気持ちがいいほどに。両端のマッチョは胸から裾まで一直線に引き千切り、さながらノースリーブの形のカーディガンスタイル。しかも着せてくれる。マッチョ二人の筋肉から滲み出た若干のマッチョ汁が冷たい。
店長マッチョは「もっとちぎりたい…」と一人でタンクトップをどんどん千切っていた。雑巾にもなれないような状態に千切られたタンクトップを手渡される。
とりあえず半裸になったマッチョ3人と記念写真を撮った。一生大切にしたい。


マッチョバーだけあって、ところどころで渡されるダンベル箸置き(正真正銘ダンベル)とか、会計の皿が円盤型の重り(2.5キロ)だったり、筋肉への負荷に余念がない。
途中生卵を手に持ちながらウロついているのを見た私は(生のまま飲むんじゃないか)と淡い期待をしてたが、残念ながら飲まなかった。

マッチョは生卵を飲むという謎の方程式があるのはなぜですかね。

店にはマッチョボイスというものもあり、マッチョがパフォーマンスをするときに「背中に羽が生えてるよ!」「肩にメロンがなってる!」など、とにかくすごい熱量を勢いのある店です。

強靭な肉体と精神が見せつけられる狂気の空間。生きていることが楽しくなること間違いなしです。

京都にいく機会があればぜひ足を運んで欲しいと思います。

明日が見えるか

ブログを書くなんて幾年ぶりだろうかなどと無駄なことを考えている今です。

なんとなく自分の中でキリがいいタイミングだったような、そうでないような。今年度で切り上げる活動があるためか、何かを紛らわせるかのようにブログを始めました。

たぶん続かないので、気まぐれに更新するような気がします。

つくることは好きでした。

何かを見てつくるのも、自分の中で膨れ上がった何かを三次元に出すことも、刺激された感情を表現することも。

しかし、それには多大なエネルギーがかかるのです。

生み出すことは、母胎から赤ん坊が生まれるが如く苦しくしんどいものであると思います。

それを続けることは容易ではないのだと。

常に頭を使い、働かせ、動かし、吐き出す。それが出来るのは心的余裕と、時間的余裕、もちろん金銭的余裕も必要でしょう。

わたしにはそれがなかった。主に時間と金銭面で。

趣味なのだからと言って仕舞えばそれまでだけれども、やるべきことに追われる中で自分を癒すのはつくることしかなかった。つくって、つくって、つくるだけ。

学業とバイトの合間に家にいるのは睡眠をするための8時間弱。その8時間のうちの何時間をつくることに当てられるのか。

睡眠時間は削られ体調を崩して、バイト先は突然の閉店。金銭的にもアウトになり、わたしは絶望の淵に立っているところです。

新しいバイトをすればいいと思うのですが、別件で二ヶ月にいっぺんは1週間ほど関西に飛んでいるような生活で固定のバイトには就けないという現実が目の前に迫ってくるのです。今のバイト先は貴重でした。1週間一度も出なくても首にならない、おかげで3年続きました。あと1年働きたかったですね。

このタイミングで、派遣なるものを始めてみるかという気持ちになりまして。

つまるところあらたな仕事先を探すタイミングが私のキリのいいタイミングであったということなのでした。

次に仕事をしたらまた書きたいと思います。